――ここにきてどれくらいになるのか。
逃げることもできず、ただ幾度も躰を重ねるだけの、不規則な日々……
白い壁に囲まれたこの一部屋に
――……今日もあの男がやってくる。
Brandy
トプトプ…
男はゆっくりと、ボトルを傾けた。
真上から流れ落ちる赤いワインが、気だるくベッドに横たわる高耶を濡らしていく。
手首には拘束具。
繋がる鎖の長さだけが、唯一許された行動の自由。
トクトクトク……
身に着けたサイズの合わぬただ一枚の白いシャツが、見え隠れする肌とともに、赤く赤く染まってゆく―…
胸から、首元、太股。
――…そして額、口唇。
先程の過ぎた行為の余韻で、熱を帯びていている躰に、冷たく滴るこの赤い雫が凍みわたってゆく。
「まるで血のようだ。―…イイですよ、とても」
「―…直江どういうつもりだッ」
「――…祝いの祝杯ですよ」
「祝い？」
「―…そう、ここであなたを独占できるようになってから、ちょうど半年目のね…」
直江の言葉に怯えつつも、高耶は自分を見下ろし眺める男を、上目遣いに激しく睨んだ。
半年経っても、この白い獣の赤い瞳だけは未だに光を失わっていない。
「また、そんな眼をして。……誘ってるんでしょう？」
「なッ…！ちがっ…ッ！」
“――淫乱”
「――わかってるんですか。その瞳が俺をたまらなく―…」
「―…ン…ッ！」
激しく重なり合う口づけ。
息ができないくらいに、深く侵していく。
白いシャツが引き裂かれ、全裸になった高耶は、直江に拘束されて身動きが取れない。
「……やめッ…！んぅ…ッ」
「―離せッッ！！」
ビシッ…！
高耶の平手が、直江の頬を激しく打った。
しばらく直江は静止したままだったが、次第にゆっくりと暗く澱んだ瞳を高耶に向ける。
「――おまえは狂ってる…ッ！」
「狂わせたのは、あなただ」
「――…あなたをここに閉じ込めて独占したって、安心などできやしない。
怯えた振りをしても無駄ですよ。あなたはただ一度として、敗北なんて認めてはいない。
私をどこまで奈落の底に落とせば気が済むのですか。
いつだって、そう、…いつだってこの男の中には高耶さん、あなたのことしか頭にない。
この狂った狂人を、望んだのは―――……」
「――…あなただ」
「…直江」
※※※
「―…あ、体が…ッ。」
「そろそろ効いてきたでしょう？この赤ワインに薬を仕込んでおいたんですよ…」
「薬だと…？」
「そう、濃厚なやつをね」
「――…あッ…」
「本音なんて、俺が暴いてあげる」
※※※
「……れよ…」
「はやく…アッ――…ッッ！」
（―…そうだ、直江）
“オレは、おまえだけが欲しい…”
おまえがいれば、それだけでいいんだ――…
End
【Brandy】
裏ページ開設記念ぷちノベル
赤ワインを高耶さんの顔にかけるというのが書きたかった模様。
赤い雫が伝うあなたに妄想を抱いてしまいました（笑）
ラチ監禁もの、実は好き…（苦笑）。ぬるくてすみません。【2002.10.07】
