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花火
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夜空に咲く一面の花――… ※※※ 「綺麗だな…」 「ええ…」 二人は、次々に打ち上げられる色彩豊かな花火に見入っていた。 闇夜に浮かんで、鮮やかに咲いては消えてゆく。 その一瞬の美に見せられるように。 「あっ！見ろよ直江っ。あれすげーよ！本当に滝みたいだ」 今は、ちょうどクライマックスだろうか。 ナイアガラの滝をイメージした大きな仕掛けが夜空に舞う。 「嬉しそうですね…」 「わりいかよ」 「いえ、喜んでいただいて嬉しいですよ」 高耶は一瞬子供みたいに、はしゃいでしまったことに照れくさくなったのか、 むくれて視線をずらしてしまった。 「――笑うなよっ！」 「かわいいですねえ…」 直江は、高耶の様子を横目で見ながら微笑んでいる。 そんな様子に高耶は諦めたのか、ふとある光景に目を留めた。 視線の先には、花火を見て楽しそうに笑う親子ずれの姿。 「――…懐かしいな」 「えっ？」 「いつだったか、まだ親父もおふくろもいた時に、家族で花火を見に行ったんだ」 「初めて見たときなんかさ、あの音と大きさだろ？ あんまりにも綺麗でビックリしてさ…ホント驚いちまったな」 「……高耶さん」 「――…でも、いつも思うことがあって。 花火が終わったとたんに、皆一斉にあわただしく帰るだろ？」 「そうですね」 「みんな、ただ帰ることに必死で、周りなんてみえてなくて 夢見ているような感覚が一瞬にして現実に戻っていく ――… それがなんだか子供ながらに寂しかったんだ。」 ――直江は、真摯な目で見つめている 「…ガキだよな」 みんな、必死なんだ。 必死に生きてる。 だからこそ、ひとときでも現実を忘れさせてくれる夢を見る。 それこそ一瞬にして消え失せてしまう――…闇夜の花だとしても、 心に焼き付いて離れはしない 記憶だけは残るんだ――… ※※※ 「――…来年も見れるかな」 直江は刹那、苦しげな瞳をみせた。 「なおえ？」 直江は、ただ黙って俯いて、答えを返さなかった。 「――……」 「…直江、何を恐れてるんだ」 「あなたは何もわかっていない」 「――…わかっている」 「いいえ、わかっていない」 「あなたは俺の絶望など、わかりはしないんだッ！！」 ――直江は声を震わせた。 「あなたを失うことなんて、耐えられない。 あなたの存在しない世界なんてそんなもの…何の価値もありはしない！ 共に生き続けなければ、それこそ何の意味も成さないんだ!!」 待っているのは、永劫の闇。孤独という名の破壊 「――…俺は壊れるしかないんだ」 「―…直江、泣いているのか？」 高耶はそっと直江の頬に手を遣った。 「オレは、ここにいるだろ？」 「――……」 「オレは生き続けるんだ。これだけは誰にだって譲れない…」 「…高耶さん」 「――…ずるいなオレは。おまえを幸せにしたいのに。 結局はおまえを苦しめることになってしまうのだろうか―…」 「何を考えてるんですか。あなたは何を…ッ」 ※※※ （―…いや、本当は、わかっている） あなたを失う迫り来る恐怖という現実を認めたくないだけ―… もういくらの余裕も無い ピリオドは近い。 でも俺はあがいてみせる。あがいて、あがいて掴んでみせる。 諦めることなんてできない、最後の一％まで―… ※※※ 「置いて逝かない。直江おまえを…」 （信じたいんだ、直江。オレは生きて幸せになる） ――…そう、オレは花火とは違う おまえの中ではけして消えることは無い。 おまえと共に 生きるんだ “ 永劫 ” ＥＮＤ ＜コメント＞ うまく言葉にできない思いを、少しでも表現したくて書いてみました。 自分なりに、答えを問い掛けてみたかったのかな…。 直江が永遠に実際には存在しない高耶さんを思いつづける そんな日が来て欲しくないけど、二人の答えを、行方を待つしかないね。 出した答えは、きっと最上に違いないから【2004.08.26桜】 |