*** 『聖夜』 *** 愛されたいと願い、傷つき、一人闇の中をさまよい続けた。 この先に道はあるのか、何もわからないまま。 求めて求めて、掴み取ろうとした…何か。 おまえと会えて、オレは初めて “信じる”ことができた。 ※※※ 「あ、雪だ…」 「…ええ」 「 ――…綺麗だな」 「高耶さん。そろそろ中へ戻らないと、風邪をひきますよ？」 「ああ、わかってる」 （―…でも） 「もう少し、もう少しでいいから」 （見ていたいんだ。この、白い世界を） ※※※ 降り積もる白い雪。 ああ、このままとけあえてしまえたらいいのに――… このままずっと雪に包まれていたい。 「あなたを包んでいる、ずっとそばにいる」 「ああ、あたたかいな」 変わることのない、おまえの温もり。 オレをすべてから護る、おまえの翼。 ※※※ 雪の灯火が、優しさを呼び覚ます。 聖なる夜がおとずれる。 ジーザス… この腕の中で叶える願い。 おまえだけがあたえてくれる。 愛し合おう この夜が明けるまで 魂が触れ合う 世界に二人だけだと錯覚するような ――…この楽園の空間で ※※※ 明日、世界が終わるとしても、 たとえこの肉体が滅んでも、 オレはおまえのことを考えつづける。 風となって、大地となって おまえを包む。 おまえのそばにありつづける。 あなたにもう二度と触れることができなくても、 あなたの声を聞くことができなくても、 抱きしめることができなくても、 …高耶さん、私はひとりではないのですね。 ああ…そうだ。 オレは離れることなどない。 おまえの中で、共に咲きつづけるんだ。 …永劫。 オレは今、幸せなんだ。 ええ、私も幸せですよ。 “信じている” あなたと共に歩み掴んだ かけがえのない、大切な、ただひとつの――…。 証明してゆくんだ。己の全てにかけて。 だが、許されるなら、 千億を生きて、この魂が消え去る最後の瞬間に、 あなたをもう一度この手で強く抱きしめることができたのなら――…。 そして、光の中、迎えにきたあなたが微笑んで、こう呼ぶんだ。 直江―…と。 ※※※ 「直江、眠ったのか？」 （夢でもみているのかな） 穏かな寝息。汗で濡れた色素の薄い前髪を、そっと梳いてやる。 「早くシャワー浴びないと、おまえこそ風邪ひくぞ？」 長い睫毛。 普段大人びて見える顔立ちが、幼くも見える寝顔。 疲れているのか、起きる気配がない。 クスクス…。 高耶はなんだか嬉しくなった。 そして、微笑を浮かべ、ゆっくりと唇を落とす。 「メリークリスマス――…」 愛してるよ おやすみ、いい夢を――… BACK