ことあるごとに「大丈夫」と口にするのは、本当は大丈夫なんかじゃないからだ。
不安で不安で今にも発狂してしまいそうだから。
自分に言い聞かせるようにこれくらいなんでもないと言い続ける。
言うほどに周りは自分を強靭な人格者だと勘違いして崇拝しはじめる。
嘘つき。
本当は誰よりも弱いくせに。
口ばかりうまくて自分でまいた嘘にがんじがらめにされて、
いつしか自分の本音すらもわからなくなっている、愚か者。
本当は強欲で厭らしくて、自分自身さえ愛せない最低の人間のくせに。
「ア、アア……ッ、もっ…………なおえ…」
この男の腕の中では自分を偽る余裕なんてない。
発する言葉を考えることもできずに、気がつくとあられもない声をあげて、
恥ずかしい液体を体中から垂れ流している。
乱れれば乱れるほど、醜くなっていくオレ自身をおまえはもっと見たい、
今以上にオカシクさせてやると執拗に責めてくる。
飽きることなく、何度も、何度も………。
――…高耶さん………
名前を呼ばれるだけでカラダ中が敏感に反応する。
直江を受け入れている部分がいやらしく収縮して悦ぶさまを、
脚をいっぱいに開かされて見つめられる。
言葉にしなくてもソコを見ればオレがどんなに感じているか直江にはすべてわかってしまう。
隠せない感情までもすべてを暴かれて。
耐え切れずにあげた悲鳴さえも極上の愛撫で喘ぎにかえられていく。
―――俺には全部みせて……俺だけに……もっと、
―――みせてやるよ、全部。
“抱いてくれ、もっと。ずっと、奥まで――………”
《愛して欲しい》
暴いてくれ。なにもかも曝け出すから。
おまえ以外はなにもいらない。
おまえしかいらない、誓ってもいい。
オレの中の全てをおまえに――……
“おまえにあげよう”
「受け取れ……」
熱く熟れた瞳で男を誘い、強引に直江の口唇を奪った。
噛み付くような、濃厚で激しい“口づけ”
「オレからの――……プレゼントだ」
そう、今日は５月３日、特別な夜――……
オレにとって、何よりも愛しい日。
直江の左胸に刻まれた傷跡を、慈しむようにそっと口唇でなぞった。
「おめでとう直江」
愛しいこの日に、特別な一夜に、
―――……乾杯。
Happy Birthday...
＜コメント＞
お友達のかずみさんより頂いた文章がとっても気に入ったので、直江BD用に掲載。
高耶さんの本心を語るイコール直江が喜ぶ…いうことでＢＤ用（笑）。
今回の短編は、前半はかずみさん、後半は私の文章構成となっております。
（私の文章は後半の【みせてやるよ…】のところからです）
前半かずみさん部分、短い文章の中で高耶の不安な心を欲望を本心をうまくとらえていて、
表現力素敵ですよね、上手いなあ。
特に、“嘘つき”“本当は誰よりも弱いくせに”“名前を呼ばれるだけで”の所、萌えました。
原作を読んでいる時、高耶さんの心の本心が垣間見えるところが好きなんです。
いつもは隠している分、心を弱さを知ることができてたまらなく嬉しく感じる。
弱い心、切なさ、欲望、嫉妬、独占欲……直江に向けられた真実が好きで…。
【2003,5,18／桜／】