*** Happy Birthday ***
おめでとうを…直江、おまえに＜１＞
「直江、明後日――……」
「おまえ…なにが、その…欲……」
「えっ？」
「あ…、いや、やっぱりいい。何でもない」
高耶は何か言いたげな様子であったのに、目線をそらして黙り込んでしまう。
そんな高耶の様子に思いあたるふしがあるのか、直江は急に上機嫌となって微笑んだ。
「高耶さん嬉しいですよ、覚えていてくれたのですね。
私の誕生日を祝っていただけるのでしょう？」
「――…何だよ、わかってんじゃねーか」
照れくささもあり、わずかに頬を赤く染めながら、高耶は唇をとがらせる。
直江はニコニコと嬉しそうに笑うばかりだ。
「高耶さん……」
「なんだよ？」
直江は高耶の耳元で、そっと囁いた。
「なんなら、去年のように×××××でも、私は大歓迎ですよ？」
「ば……ッ…！！」
「馬鹿…ッ！なに考えてんだ直江！あれは、金輪際なしだからなッ…いいな！」
「それは残念ですねぇ…」
くすくすと、直江は声を立てて笑った。
高耶は、直江の余裕ともいえる態度に苛立ちを隠せないらしい。
軽くあしらわれてしまったようで、なんだか無性に悔しいのだ。
（去年のアレなんて冗談じゃない！）
ここで甘い顔をみせてはダメだ。
去年のあいつの誕生日には、……思い出すだけでも恥ずかしさで顔から火が出ちまう。
いくらあいつの要望とはいえ、やるべきじゃなかった。
悲惨なめにあった。すごいことになった――……
次の日の朝なんて、まともに体を動かすこともできなかったのだ。
（“裸エプロン”なんて恥ずかしい格好、二度とやるもんか！）←笑
※※※
――……そして、誕生日当日。
結局何をプレゼントすればいいのか決め兼ねて、高耶は何一つ買っていない状況だった。
プレゼント品を探すべく、誕生日当日にデパート内をぐるぐると彷徨い続けている。
しかも３日は連休の初日ということで、人の多さと熱気で疲れが増す一方だ。
「はあ…、どうすりゃいいんだよ」
（何をプレゼントすれば、あいつが喜ぶのかな）
一緒に暮らすようになっても、未だにあいつの好みを、よく知らないなんて情けない。
今日は夕方に、ある高級ホテル内のレストランで直江と待ちあわせの約束をしていた。
直江は昨日から仕事で家には帰っておらず、仕事帰りに直接ホテルへ向かうことになっている。
（オレはただ、おまえが……）
おまえがプレゼントを受け取った時の喜ぶ顔が見たいのに――…
本当に何を買えばいいのか…と、再び焦りはじめたところに、突然、携帯の着信音が鳴り響く。
画面に表示されるのは、直江の個人用携帯番号だった。
「――直江？」
＜2へ続く＞