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銃口から微かに立ち上る硝煙
……血の臭い これは夢なのか、ヒトがまるで人形のように無残に死んでゆく 銃声だけが響く そう、ここは 殺戮の闇――… Desire ＜序章＞ ――ある研修所の建物に、異変が起きていた。 突然押し入ってきた男達が次々と内部を破壊していく。 男達はどうやら素人ではない。 この洗練された行動は、軍隊かなにかいずれにしても訓練された人達のようだ。 研究所の人々は抵抗する間もなく、死体だけが増えていく。 どおぉぉぉぉんっ……！ するどい爆風が空気を切り裂いた。 耳が引き千切れるようなすさまじい音。 あちこちから聴こえる悲鳴と言う名の叫び、噴き上げる熱風。 「あつい…あついよぉっ…」 爆風により壊された壁の破片が散る部屋の片隅に、少年が一人蹲っていた。 年は十歳くらいだろうか、恐怖で震えが止まらない。 （見つかったら殺される、殺されるっ！！） ―― 少年、高耶は必死で隠れ、声を押し殺して心の中で叫んでいた。 ※※※ ジジ…ジジジ…… 『―――直江、守備はどんな様子だ』 かすかに響く無線の声。身体に装着したその電子音に、 建物を破壊した軍隊のリーダーだと思われる男、直江が無線に反応し目を細めた。 「建物破壊システム作動、研究材料はすでに確保済み。 予定の3名は捕らえました。あとは標的の所長を抹殺するのみです」 ――直江は淡々と無表情で答える。 『直江、あと十分でチームを引き上げろ、急げ時間がない』 「―――了解」 返答しながら、新たな弾を装填する。 その後わずか一瞬にして、至近距離で近づいた警備兵に銃弾が撃ちこまれた。 「ぎゃあぁぁぁぁぁ……ッ！！」 直江に向けられた銃口などひとつもなかった。 向けられても、その相手がトリガーを弾く瞬間には――全てが遅いのだ。 相手がまるでスローモーションのようにでも見えているのか、 それくらい直江の銃の動きは、正確で焦りも無く、敏速だった。 直江に付着した相手の飛び散る血だけが――……何もかもを物語っている。 ――それから5分後 標的の男が身体を波打たせて、ドサリと瓦礫の上に倒れこんだ。 「――終わったか…」 所長の死を確認し、直江が安堵の声を漏らしたその刹那――… 信じられないものをみてしまったという怯える少年、 高耶がそこにいた。 「――…子供？！」 （見られたか） 『直江、――殺せ』 無線から聞こえる命令の声。 「長官ですが…」 『かわいそうだが、しかたない。この場合やむをえん。 現場を見られているんだ、子供を消すしかない』 「――了解」 カチリ…… 直江は表情を変えず、機械のごとく冷静に銃のレバーを弾いた。 その音にビクリと高耶は震え、凍りつく。 その時、ふと…高耶は瓦礫の上に転がる、所長の無残な死体に目を向けた。 じっと眺めた後、ゆっくりと直江の方へと振り向いてゆく――…… （―――死を覚悟したのか） 振り返る高耶をみて、直江はそう感じた。 ―――そして…視線が交じり合う瞬間 「――――……！」 射抜かれるかと思った。 鋭く、身を切るような印象的な少年の瞳。 先程の怯えたような瞳は、もうどこにもない。 憎しみとも違う、挑むような、深い闇に燃えさかる炎のような――… （これが、子供の持つ瞳なのか？） 直江は魅せられたように、その瞳から目を反らすことができなかった。 ※※※ ――これが二人の最初の出会いである。 Continue... ＜コメント＞ こういう暗めな設定が好きなのです。続き…書けるかしら…。【2002.9.25／ 桜】 |