*** 静寂 ***

「高耶さん、ここにいたんですか」 「…直江？」 「探しましたよ、急にいなくなったりして」 「――……ああ、ごめん」 「気がついたら、ここにいたんだ」 ――…静かに波の音だけが響いていた。 透きとおる一面の青。 暖かな陽射し、緩やかな風。 誰一人いないこの静かな空間で、高耶は一人、海を眺めている。 「ああ…静かだ――……」 「…そうですね」 「少し寒くなってきたな…」 直江は急に、背後から強く高耶を抱きしめた。 「直江、どうし…」 「海を眺めるあなたの姿は、怖いくらいにこの海に溶け込んで…美しかった」 「………」 「それでいて、どこか―――…どこか…」 （――…消えてしまいそうで） 「―――…いかないで…ッ」 （逝かないで） 「――……直江」

ＮＥＸＴ　　ＢＡＣＫ